Q. 収穫後ぶどうは洗うのか
2016/12/05
ご質問を頂いたのでお答えします。ズバリ、
A. 洗いません。
その理由は、洗浄にかかる手間とコストも一理ありますが、最大の理由は水気が付着すると、果皮に対する果肉の割合が高くなり、糖度も下がるからです。良いワインは良いぶどう(健全でいて完熟している)から誕生します。ワイン造りに水分はNGなのです。その上、果皮に生息する酵母を洗い流す事により減少、自生酵母を用いる醸造にはご法度です。
畑で収穫されたぶどうは酸化を防ぐ為に、重みで潰れないよう、できる限り小さな収穫ボックスに入れられ、すぐに醸造所へ運ばれます。収穫地と醸造所が離れて運送に時間がかかる場合は、傷み防止、いわゆる酸化防止の為に、ポストハーベストが施されます。アメリカ産のオレンジやレモンが長期のコンテナ輸送に耐えられるよう、輸出時に施されるアレです。畑と醸造所が隣接している事はアドヴァンテージですね。
さて、醸造所に到着したぶどうは、除梗破砕機を使用して、果梗の除去と果粒の破砕が行われます。果粒の破砕はごく軽く圧力をかけます。圧が強いと果皮や種の不要成分が溶出し、品質低下を招いてしまうのです。
選果台での選果です。
果梗は一切除去しない全房圧搾や、全てを除去せずに一部を破砕果と共に使うこともあります。2013年にLou Dumont(リューデュモン)の仲田晃司氏を訪れた際、前年の樽試飲をさせて頂きました。2012年は非常にカビ(ベト病)に悩んだ年で、エフイアージュにより葉のコントロールとボルドー液で対処したそうです。ニュイ サン ジョルジュは、雹の被害はなかったものの、前年度より2割程、生産が落ち込みました。醸造のセンスに委ねられた、選果が重要な年となったと仲田氏は語ります。シャンボール ミュージニーは果梗が熟したので破砕果と一緒に、モレ サンドニは試しに梗を殆ど残して茎も一緒に醸造したそうです。マロラクティック発酵は終わり、SO2を投入した直後ではありましたが、酸が豊かでフレッシュ、時を経て複雑味に変化するであろう事が予測できる味わいでした。
機械を使わずに足で人力で破砕です。体重の軽い子供達は破砕にぴったりなのだとか。今日はぶどうは洗うのか?から除梗と破砕についてお話しました。