酵母添加~発酵
2016/11/25
収穫されたぶどうは除梗、破砕された後、果汁管理が施されます。
その後、自生酵母を使用している造り手以外は人工的に酵母を添加します。酵母は英語ではパン酵母でお馴染みのイースト(yeast)の事で、その種類や使用される用途も様々です。ワイン用の酵母にはREMIUM LINE、IFRUIT LINE、TRADITIONAL LINEやAMAR04等があります。ワインの個性はテロワールではなく使用する酵母によるとさえ言われている、ワインの味わいを決定する重要な要素です。
白ワインについて見てみましょう。スキンコンタクト(醸し)をしない場合は、果汁と種や果皮等の個体を分離して、さらに圧搾機にかけて搾汁します。ぶどうジュースの状態ですね。圧力をかけずに自然に流れ出るフリーランジュースと圧搾されて出てくる液体とでは品質が異なります。この果汁に殺菌果汁で保存していた酵母を培養し、果汁の3~5%に相当する酵母培養液を酒母として添加します。古い醸造方法です。現代は様々な乾燥酵母の中から造り手の意図するものを選定して使います。ぶどう果汁にSO2を添加して、5~6時間経過して作用が緩和された後、酵母を加えます。むろんの事、酵母はSO2の耐性が強いものを使用します。
初発糖濃度が20%を超えると酵母育成を阻害するようSO2を使用します。発酵の遅延は果汁の酸化や雑菌による酒質低下を招くので、速やかな酵母の増殖により発酵の開始を促します。タンク内の温度を15℃前後にコントロールして3~4週間かけて発酵を行います。ちなみに発酵を途中で強制的に終了させて甘口ワインに仕上げるには、酵母の活動を停止させる3つの方法があります。
1.SO2の添加
2.発酵液の冷却
3.遠心分離機による酵母の除去
続いて赤ワインにいってみましょう。白ワインのように搾汁はせずにSO2、補糖、酵母を加えて発酵させます。種と果皮が混在した状態で、温度が低いと色素が抽出されず、高いと酸化するので、25~30℃に保ち1週間ほど主発酵を行います。この時、炭酸ガスによって浮き上がって来た果皮を沈めて、より色素やタンニンを引き出す作業である果帽管理も行います。液面の果皮を放置すると果皮成分の抽出が遅れます。好気性の酢酸菌が増え、揮発酸の増加を招きます。後発酵は圧搾機で固形物を取り除いて行います。
マロラクティック発酵をする際は、自然発生かスターターとなる凍結乾燥粉末を直接投入します。ワイン中のりんご酸が減少し、乳酸が増殖します。SO2の濃度が30ppm以上になると乳酸菌の働きを妨害し、PHが3.2を下回ると乳酸菌の増殖が困難となるので調整が必要です。りんご酸と乳酸の比率がバランスが良くなったらSO2で働きを停止させます。
沈殿と滓引きをを何度か繰り返して、同年の11月頃に樽に入れられ熟成の工程に移ります。
参考文献:「ワインと科学」清水健一