アルザスワイン
2016/12/02
フランスの北東部にあるアルザス地方は、著者、大野が最も好きなワイン産地です。有名産地ではありますが、ボルドーやブルゴーニュと比べてマイナーなので、ランデブー社会(要アポイント、銀行でさえも出入金以外で行く際にもアポが必要です)のフランスでもアポイントなしで気軽にドメーヌをビジットできます。
ドイツとの国境近くで、東にライン川、西にヴォージュ山脈に挟まれた、幅1~5㎞、南北100㎞の細長い地域に1.5万/haの畑があります。連なった山脈が大西洋からの湿った風をブロックし、日照量も多く、降雨量はフランスで最も少なく年間500㎜程度の、乾燥した半大陸性気候です。
アルザス地方は歴史的、文化的にドイツの影響を強く受けています。アルザス地方がフランス領だと、ワインのクオリティが重視され、ドイツ領になると量を得る為、質の低下が見られました。フランスやイタリアの南北を比較した品質の位置づけと同じです。ドイツにとって南はアルザスです。歴史的に何度も領土の奪い合いが繰り返され、その都度、ワインも影響を受けてて来ました。アルザスワインのボトルの形状はドイツと同じようなフルート型なのが特徴です。アルザスやジュラ地方ではフルート型がAOCで義務付けられています。気候も冷涼な為、栽培品種もリースリング、ピノ グリ、ゲヴェルツ トラミネール、ミュスカ、ピノノワールなどのドイツ系のものが多く、90%を誇る、白ワインを得意とする産地で、酸が豊かでアルコールが抑えられたものが多く見られます。
冷涼な地域柄、リスクの分散の為に、このような傾向が見られます。
・品種を多く栽培する
・小規模な家族経営の生産者
・醸造に使用するタンクも小規模
ぶどうが熟すのに時間がかかる為に、9月半ばから11月頃まで長期に渡り収穫が行われます。また、不足した糖を補う為に発酵時、補糖が行われることが頻繁にあります。産地の醸造の特徴をまとめてみました。
・自生酵母を使用する造り手が多い
・白ワインにフレッシュな酸とフルーティさを残す為、15℃前後の低温で発酵させる
・白ワインはマロラクティック発酵を回避する
・果実味を表現し、ウッド香を抑える為、ステンレスタンクや古大樽で発酵、熟成させる
・赤ワインはマロラクティック発酵を行う
・まろやかに仕上げる為に、残糖3~4g/Lにコントロールする
・糖分が高いと途中でアルコール発酵が停止し、甘口ワインになる事もある
アルザスワインの魅力にはパッチワークのような畑が生み出す土壌の複雑性があります。大きな分類でも、片麻岩質、片岩質、花崗岩質、砂岩質、火山性堆積岩質、石灰岩質、粘土岩質、泥灰岩質などの20種類もの土壌に分けられます。畝や国道を挟んだ隣同士の畑が、全くタイプの違ったものだったりします。また、大野が大好きなビオディナミの生産者も増えている産地です。多様性の極めて高いワイン産地に釘付けです。