ブレットは汚染か否か
2017/01/27
今日はブレットことブレタノミ(マイ)セスの特徴から香り成分、発生原因を追究したいと思います。ブレッドを腐敗菌と勘違いされる方もいらっしゃいますが、発酵のプロセスで生じる酵母の一種です。20世紀にビール産業で発見されました。この菌の強靭さには実に驚かされます。
・アルコール発酵終盤の微生物にとって過酷な環境下でも生きる
・他の微生物を栄養にして生きる
生命力がとても強いですね。軽いブレッドはポジティブに捉える事ができますが、極端に強いと厄介な2つの問題が浮上します。先ず1つ目は、品種特有のフルーティーな香りが弱まる事です。エステルなどの香り成分をブレッドが分解してしまうからです。そして2つ目は、発酵で使われない糖分(ペントース)をブレッドが奪い、ボディのないワインに仕上がる事です。通常、2~4g/Lの残糖は甘味ではなくボディ、骨格としてワインを良くします。しかし、たった0.5g/Lの残糖でも彼らはそれらを餌として増殖し、深刻な影響をワインに与えます。ブレッドがワインにもたらすネガティブなポイントは、香りとボディの欠如です。
また、ブレッドは化学反応を引き起こし、揮発性フェノール化合物と脂肪酸を生成します。なかにはそれが好ましくない香りだったりします。ブレッド特有の香りの主な原因物質を見てみましょう。
・4-エチルフェノール・・・・馬小屋、汗、救急箱
・4-エチルグアヤコール・・・・スパイシーさ、燻製香、土
・イソ吉草酸・・・・馬、糞臭、家畜
原因物質の比率によって香りも変わってきます。4-エチルグアヤコールはワインに複雑香を与えるのでポジティブですが、4-エチルフェノールは濃度によって異なり、低濃度であれば個性的と高評価であったり、反対に高濃度であれば悪臭とみなされます。ブレッドは白ワインではなく赤ワインに多く見られます。ブレッドが増える原因(下記)のうち、ポリフェノールとPHは赤ワインに当てはまります。
〈ブレッドが増える原因〉
・ポリフェノールが多い
・PHが高い
・熟した果実
・SO2 亜硫酸 無添加か使用量が低い
・自然派の造り手
ブレッドの発生を抑えるのは難しいのですが、できれば醸造所内、とりわけ樽を清潔に保つ事が最も有効的だと生産者は語ります。最後に本日のタイトルである「ブレットは汚染か否か」ですが、ケースバイケースと言っておきましょう。ブレッドの度合いによる、ワインのタイプによる、抜栓時期による、人の閾値と嗜好による、季節や合わせるお料理にもよる。微量だとポジティブさも兼ね備えているので、一概に汚染=悪とも言い切れませんね。状況によりけりです。