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フィロキセラのライフサイクル

   

 

いきなりの昆虫(?!)に驚かれたかと思います。今日はフィロキセラという虫についてですが、そのライフサイクルに入る前に、What’s フィロキセラ?からお話したいと思いますので、しばらくお付き合い下さい。19世紀末、世界を恐怖に陥れたフィロキセラ(Phylloxeraha)、ワイン業界では知らぬものがいないであろうほど、実に有名な虫です。全長1㎜にも満たない小さなぶどう根アブラムシの事ですが彼らを侮るなかれ。成虫、幼虫は根や葉から樹液を吸ってその部分にコブを形成します。ぶどう木の生育を阻害し(開花不良、無核果、葉焼け、葉色減退)やがて木は衰弱して枯死します。

 

1863年に南仏ラングドックのM・ボルティと言う男性が、品種改良の研究用にNYから、ぶどうの苗木を1ケース輸入しました。畑に植えたところ2年後に周辺のぶどう木が次々と枯死し、10年かけてフランス中がほぼ全滅、その後ヨーロッパ全土に広がりました。1882年にはフロキセラは日本にも上陸し、離島問わず世界中に深刻な被害を与えました。当初は、ぶどう木が枯れていく原因がわかりませんでした。フランス政府も懸賞金をかけて、事態の収束に乗り出しましたが、10年と長きに渡り、原因究明ができずにいました。原因不明のこの見えない恐怖には、対処する手立てもありませんでした。

 

NYから輸入された北米産の苗木であるヴィティス ラブルスカは、フィロキセラと共存しています。賢い寄生虫は宿り主を殺しません。よって、解決策はフィロキセラに免疫のあるラブルスカを台木にして、ヨーロッパ産のヴェ二フィラを接ぎ木する事で事態は収まりました。世間を大変お騒がせした虫ですが、彼らのライフサイクルが面白いのなんの。ここからが今回のトピックです。

 

 

この表だけご覧になってもわからないと思うので、ひとつずつ説明していきましょう。第一に、フィロキセラは他のアブラムシと同様にと有性生殖単為生殖(雌が単独で子を成す事)の両方を行います。単為生殖の段階では、雌のみが存在します。

 

 

晩秋、ぶどう木の樹皮に産み付けられた卵は越冬します。春になると病原性のある葉こぶ型が生まれます。全て雌で羽のない無翅型です。葉の裏側に付着して樹液を吸い、葉表に向かって開いた葉こぶの形成を促進して自分の身を守ります。(上図A)

 

 

葉こぶ型は単為生殖で産卵します。葉こぶ内の卵が孵化し幼虫となると、その一部が根に降りて寄生し成虫となります。根こぶ型は根こぶを形成し樹液を吸って生きます。葉こぶ型と同じく、雌で羽のない無翅型です。個体数を増やしていきます。(上図B)

 

 

根こぶ型は卵を産み、雌の有翅型となります。有性生殖のはじまりです。羽が生えているので風に乗って2~3㎞は飛行も可能です(上図C)それらは大きさの異なる2種類の卵を産みます。ひとつが雄(小さい)、もうひとつが雌(大きい)となります。この2匹は交尾をする事だけを目的とし、エサを食べる事もありません。雌が産卵してその卵が冬を越すとライフサイクルのスタート地点に戻ります。(上図D)

 

フィロキセラの驚くべきライフサイクルいかがでしたでしょうか。まだまだ解明されていない謎の虫です。ジェイミーグッド著書「ワインの科学」の1作目を読んだ4年前からこの事を誰かに言いたくてうずうずしていました。ただ、執筆中に全身が痒くなるという事が起こりました。「嫌!虫さん!!」です。フィロキセラがフランスに上陸した年号は何でしたっけ。1863年でしたね。い・や・む・し・さん。1863。お食事中の方、大変失礼致しました。(食事中ぐらいはスマートフォン置きなさいよ←大野の心の声)

 

 

 

 

 

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