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アルザス グラン クリュの賛否

      2016/12/02

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アルザスグランクリュとは一体、何でしょうか。ボルドー地方ではワインメーカーであるシャトーに対して、ブルゴーニュ地方では畑に対して、また、南フランスでは熟成年数に対して格付けがなされます。アルザス地方では優れた畑を格上のAOCと認定しています。指定されたリューディ(小地区)で収穫量や糖度など、ある一定基準を満たせばアルザス グラン クリュと名乗れます。とは言っても、グラン クリュは1975年までAOCには一切反映されていませんでした。認定された年にSchlossbergがグランクリュに格付けされ、1983年には24ヶ所に増え、現在は51ヶ所になっています。

 

各グランクリュの面積は3ha~80haと様々です。ぶどうは手摘みが原則で、 使用可能な品種もリースリング、ピノ グリ、ゲヴェルツ トラミネール、ミュスカの上質指定4品種を単独のみです。51のグラン クリュのうち、例外があり、Zotzenbergではミュスカの代わりにシルバーナーが認められ、Altenberg de Bergheim、 Kaefferkopfでは上質指定4品種のブレンドも認められています。アルザスワインの年間総生産量は約108.2万hlですが、グラン クリュは僅か4%である4.5万hlです。単一品種から造られる事が多く。他の地方とは異なり、ぶどう品種名をラベルに記載するのが一般的です。リューディ名(=グランクリュ名)とヴィンテージは併記しなければなりません。

 

さて、このグランクリュ。生産者の間では賛否両論があります。生産者だけでなく、消費者である飲み手にとっても意見が分かれるところです。地方の優良畑を顕揚できて素晴らしいと言う賛成派とは裏腹に、反対派の意見では、

 

・境界線が厳密ではないので広いグランクリュでは80haの面積があり、テロワールの条件にばらつきがある。

・グランクリュのものを使っても一部を除いて単独品種で使用しないとグランクリュを名乗れない。

 

などが挙がっています。トリンバック社のプレステージである「クロサンチューヌ」はグランクリュのRosacker(1.38ha)で栽培されていますが、「グランクリュ」表記も「AOC Rosacker」の記載もありません。これは生産者がRosackerの一部の畑のポテンシャルを疑問に感じているからです。実際、2013年にトリンバック社を訪問し、06年と07年の比較試飲をした際に、この質問を投げかけたところ、

 

「グランクリュなんて関係ないわ、私達はその前からずっとワイン造りを営んで来たのだから」

 

とマダム。確かにドメーヌの方が何世代にも渡りその土地に精通し歴史もある、仰る通りです。彼らからしたらグランクリュはお構いなしです。賛同しないトリンバック社らは、クロclosと言う単語の後に、自らが持っているグランクリュよりさらに限定された特別区画名を付けます。クロサンチューヌがいい例です。この賛否を踏まえて、昨今は協同組合からの政治的な働きにより、境界線の策定が甘くなる事で落ち着いたようです。

 

世間はハイブランドを好む傾向がありブランド化され地位を確立すると、さほど努力しなくても高値が付く為、あぐらをかく生産者も出てきます。世界的な銘醸地であるブルゴーニュでさえもそんな怠慢な生産者が数知れません。著者もアルザスのグランクリュは40/51区画を経験しましたが、その名に値しない造り手も沢山いたように記憶しています。グランクリュなどのネームバリュはひとつの情報に過ぎない程度に思っておいた方が賢明ですね。

 

 

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