ワイングラスの魔法Ⅱ【実践編】
2016/11/23
前回の「ワイングラスの魔法1【講義編】」の続編です。グラスの形状に起因して香りと味わいが変化することをお話しました。今回は実践編として、もう少し掘り下げてグラスの形状にアプローチしていきましょう。グラス選びの基本からワインのタイプ別にその魅力を引き出す魔法のグラスについてご紹介致します。
・グラス選びの基本
無色透明・・・・・・ワインの色合いを楽しむ為
大きめのボール・・・香りを楽しむ為
薄手・・・・・・・・口に触れた際、繊細な印象を与えるよう
チューリップ型・・・先がすぼまり香りが拡散されないよう
クリスタルガラス・・ソーダガラスと違い表面に凹凸がある
表面積が広く揮発性が高く香りが増す
・ワインのタイプ別にお勧めする魔法のグラス
重めのボルドータイプの赤ワイン(上段図1)
(カベルネソーヴィニョン、メルロー、カベルネフラン、シラー、ネッビオーロ、テンプラニーリョ、グラシアーノ、コツイファリ)
面長で大きなグラスは酸もタンニンもある重厚感のあるフルボディの香りを開かせます。液体は口元でワイドに広がり舌全体で酸味、渋味、果実味を解きほぐします。厚みのあるボディと滑らかな渋味を体感できます。
軽めのブルゴーニュタイプの赤ワイン(上段図2)
(ピノノワール、バルベーラ、グルナッシュ)
大きなバルーン型のグラスは先がすぼまっているので赤系果実や熟成された複雑な香りを逃しません。液体は舌先に導かれ甘味、苦味を感じる中央部分を直線的に流れます。酸が豊富で渋味が中程度のライト~ミディアムボディのワインに適しています。より優しく繊細でエレガントなワインをお楽しみ頂けます。
すっきりとした白ワインやスパークリングワイン(上段図3)
(リースリング、ソーヴィニョン、ヴィオニエ、ゼレン、樽熟成を行わないシャルドネ、ロゼ、シャンパーニュ、スプマンテ)
縦長で小ぶりのグラスは、柑橘香、ハーブ香を漂わせ、酸が豊富でフレッシュな印象を与えます。液体は舌先から中央を通り一気に喉の奥へ流れます。酸味が過度に強調されず、ミネラル感や果実味が心地よく広がります。白ワインだけでなくスパークリングワインにもお勧めです。フルート型と比べるとシャンパーニュの複雑なアロマや奥深い味わいを堪能できます。
コクのある白ワインや熟成された白ワイン(上段図4)
(樽熟成を行ったシャルドネやロゼ)
大振りで膨らみのあるグラスはバター、ナッツ、バニラなどの「こっくりとした」芳醇な香りを引き出します。舌の上に広い幅で流れ込み柔らかい酸とクリーミーなコクが口内全体に広がります。酸味が控えめなワインにぴったりのグラスです。
・ワインを注ぐ量
最後にワインを注ぐ分量についてです。たまにビストロで表面張力を利用してこぼれるギリギリのところまでワインを注いでくれるお店がありますよね。グラスを持ち上げることは出来ないので口を近づけて頂きます。パフォーマンスとしては良いのですが、実は入れすぎはNGです。注いだ後に残されるグラス内の空間がとても重要だからです。空気の触れる液体面積が広いほどよく香りが立ち、より長く香りの変化を楽しめます。真横から見てグラスの一番太いところから1.5~2cm下がベストです。入れすぎてもグラスの一番太いところまでですね。
2回に渡りおおくりした「ワイングラスの魔法」いかがでしたでしょうか。ロマネコンティ級の高級ワインをマグカップで飲む方はいらっしゃらないとは思いますが、リーズナブルなワインでも適切なグラスを使用すると、そのワインの持つ魅力は最大限に発揮されます。普段飲んでいるワインも各タイプに合わせてワンランク上のグラスを選んでみてはいかがでしょうか。ただし、上質なワイングラスのガラスは薄いので洗浄の際はくれぐれも気を付けて下さいね。著者はもっぱらお酒が抜けた翌朝に洗っています。